はじめに
令和7年10月19日に行われた特定行政書士試試験を受験してきました。
正式には特定行政書士法定研修考査と言います。
私は令和4年度の行政書士試験に合格し、令和6年に登録をした新米の行政書士です。
今回は初めて特定行政書士試験を受験してみた感想と、私自身が感じた難易度をお話ししていきます。
(あくまで私個人の勝手な感想や評価なので、そこのところご理解いただけますと幸いです。)
試験の概要
出題数は4肢択一の30問で、試験時間は14時~16時の2時間で全国一斉に開催されます。
ちなみに受験票に記載されている受験番号の『Aー〇〇』と『Zー〇〇』に関してはAが初受験でZが2回目以降の受験を意味しているとのことです。
出題されるされる科目と内訳は主に以下の内容でした。
- 行政手続法 (8問)
- 行政不服審査法 (8問)
- 行政事件訴訟法 (4問)
- 要件事実・事実認定論 (7問)
- 特定行政書士の倫理 (3問)
合格基準点は公開されておらず「おおよそ6割」とされています。どうやら試験の難易度によって変動することがあるみたいです。
とはいえ18問正解でピッタリ6割なので19問以上の正答率で合格圏内になるのではないかと思います。
そして基準点が試験の難易度によって変動するということは、裏を返せば合格率を例年、一定程度に保ちたいという運営側の意図を感じ取れます。
なので、難易度が高く正答率が例年より著しく下がればピッタリ6割の18問正解でも十分可能性はあるといえるでしょう。
試験の感想
今年の試験は行政書士法の改正によって受験者が増加した影響なのか、例年の試験会場より少し大きめの会場となってました。
受験者は私の単位会では21名でした。
考査の時間的な余裕
時間的には、30問をザックリ解き、ある程度の正答を出しておいて、2周目にもう一度ゆっくり見直しをしながらマークシートを塗りつぶしていき1時間半で全てが完了しました。
ゆっくり丁寧に解いていっても、かなり時間には余裕があります。
とはいっても、ノー勉強や勉強不足で臨んだ場合は時間的な余裕は無いかもしれません。
行政法(20問)
行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法に関しては条文問題が多く、条文をしっかりと憶えていれば答えられる問題が多く出題されているように感じられました。
また、事例を条文に当てはめて「条文にこう書かれているから、この事例に条文を当てはめると、この事例の選択肢は〇だよね、×だよね」といった感じで考えさせられる問題も数問ありました。
要件事実・事実認定論(7問)
要件事実・事実認定論に関しては「否認・積極否認・抗弁」・「主張立証」・「要件事実に関する穴埋め問題」など毎年問われそうな内容の設問が目立ちました。
しかしながら、過去問と同様に選択肢を1つに絞れる問題は少なく(勉強不足なのかもしれませんが)確実に答えられる問題は落とせないという印象です。
7問中の3~4問くらい正解していれば上出来かなといった内容でした。
特定行政書士の倫理(3問)
特定行政書士の倫理に関しては、かなり捻ってきたな!といった感想です。
正直、心の中で『こんな訳の分からない問題出すなよ!!!!!』って叫んでました。
ここの科目に関しては次の令和7年度の難易度は?で愚痴も交えてお伝えします。
全体的に過去問との比較
私自身の独断と偏見で過去2年の過去問ベースを比較して評価すると、行政法は易。要件事実はやや難。特定行政書士論理は難。といった評価です。
内容としては、2択まで絞れた問題が9問、3択以上になってしまった問題が3問あり、問われている内容一つ一つがかなり難しく、本当に毎年の合格率が60%以上ある試験のか?と疑ってしまうくらいでした。
とはいえ、この試験は行政法が30問中20問出題されます。行政書士試験でいうところの得点源です。
なので行政書士試験合格後であれば、行政法に関する内容をある程度憶えているので、かなり有利に戦うことができます。
令和7年度の難易度は?
では、今年の特定行政書士試験は例年に比べて難しかったのでしょうか、易しかったのでしょうか?
結論から言ってしまうとかなり難しかった!
です。
理由は主に3つ。
1.個数問題の増加
そう思った根拠として以下の表を見ていただければわかりますが、今年の試験では個数問題が6問出題されています。
個数問題は「次のア~エのうち正しいものを全て選べ」といった感じで出題されるのでア~エの全てを知っていないと正解ができず、正解率も通常の4肢択一よりも下がる傾向にあります。
その個数問題を去年の3倍出題させてきました。
| 令和5年度 | 令和6年度 | 令和7年度 | |
|---|---|---|---|
| 個数問題 | 1問 | 2問 | 6問 |
2.過去2回の過去問では見たことのない新しい出題形式
次に令和5年度と6年度には無い新しい出題形式がありました。
例を挙げて説明をすると
1.Aは役所に①の添付書類を提出すれば要件の証明となる。
2.上記の添付書類だけでは要件の証明とはならず、②の添付書類も提出する必要がある。
などといった感じで、選択肢2で「上記の」という言い回しを使い選択肢1の内容を絡めた出題が、要件事実・事実認定論の科目で連続して2問出題されました。
通常であれば選択肢個々に文章を組み立てて出題されますが、「上記の」などといった前の選択肢を絡めてくる出題の仕方に少しビックリし、問われている内容もについてもこれといった明確な解答を導き出せない状況の中、『きっと出題者側は「上記の」が入った選択肢を正解にしたいのではないのか』などと、訳の分からないことをいろいろと考え「上記の」が入った選択肢を選びました。
あとから冷静に考えると、ただの4肢択一なのですが。
冷静になれないのが本番の難しさです。
3.得点源のはずが…
最後は「特定行政書士の倫理」の3問です。
私は令和3年度・令和5年度・令和6年度の3年分と模試1回の計4回分を2周づつやりましたが、特定行政書士の倫理に関しては1周目から全て正解していました。
行政書士試験に合格していれば誰でも答えられるような常識問題と言ってもいい内容で、まさに得点源となる3問だったので完全に舐めてました。
今回の試験では3問全てが個数問題で、更にその中に「わからない!」若しくは「○×どちらとも読み取れるグレーな言い回し」が含まれており、出題内容もかなり考えさせられる内容となっていました。
試験後に同期の先生が「最後の3問!ひどくなかったですか?」と思わず愚痴をこぼしてしていたほどです。
ちなみに私はほんとに舐めていたので文章の読み間違いもあり2問不正解が確定しています。
行政書士試験との違い
このような上記の理由からここ数年の過去問と比較してかなり難しく感じました。
また、特定行政書士試験と普通の行政書士試験を比べると、行政法(20問)での違いについてしか語ることはできませんが、全体的に行政書士試験の方が素直な問題が多く、問われ方もそんなに深く考えなくてもいい問題で構成されている気がします。
全ての出題問題ではありませんが、特定行政書士考査は条文のカッコ書きの細かい部分の出題であったり、事例を条文の根拠で判断させるような出題の仕方もあり、本試験との違いがはっきりと表れる設問がいくつかありました。
先輩方が行政書士試験より難しいよ!とアドバイスをしてくれたのが、今更ですがよくわかりました。
最後に
今回、初めて特定行政書士試験を受験するにあたり、行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法を一から勉強し直し、受験生時代に行政書士試験のために頭に叩き込んだ内容が表面的なものでしかないということに気付かされました。
勉強を進めていくうちに、何故この条文があるのか、この条文のこの文言が無ければ後々困るよね!など深いところまで理解することができ、さらに間違った解釈をしていた部分の修正をすることができました。
深く思考を巡らせることができ確実にステップアップしました。
この記事をご覧になられている現役の先生方、そしてこれから行政書士試験を受験しようと思っている受験生のみなさん、私は特定行政書士になっても実際に不服審査の代理業務を受任することはほぼ無いし、受験料も8万円と高いこともあり特定行政書士になっても意味が無い!といった声をよく耳にします。
ですが、特定行政書士になってプラスになることはあってもマイナスになることはありませんし、特定行政書士にならなければプラスになることはありません。
許認可をメイン業務として渡り歩いていくのであれば役所と対等にやりあっていく知識や術も必要となってくると思います。そして、ご自身のステップアップのためにも是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
行政書士法の改正により、特定行政書士の業務範囲が広がっていく中、行政書士にとって特定行政書士というものに付加価値があると思う人が増えてくれば、特定行政書士考査はさらに難易度が上がっていくのではないのかと思います。
とはいえ、受験料の高さと合格率を検討したときに、それでも受験したいと思えるのか!?といった点も課題ではあります。今まで通りの高い受験料を維持して合格率を60%以上とするのか、受験料を半額にして合格率も半分の30%程度にするのか。
受験する側からすれば料金を下げて合格率を維持してほしいものです。
私自身まだ合否の結果を待っている状況ではありますが、一人でも多くの先生方が特定行政書士としてご活躍できることを切に願っております。
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