
よく電話でのお問い合わせで『亡くなった親の遺産の名義変更は自分でできますか?専門家に依頼するとお金がかかるので、無料で教えてくれるところってありますか?』などという質問をされる方がいます。
結論から言ってしまうと自分でできます!
ですが、それは時間と労力をかなり使います。
では、これから亡くなった親の名義の遺産をどういった流れで名義変更するのか、自分で手続きを進めた場合のリスクなどを解説していきたいと思います。
【相続関係のリンク先】
親が亡くなったらすること。各手続き
遺産分割協議書とは
農地・森林を相続した場合
相続時の不動産調査(市と法務局の相違)
遺産分割をやらないとどうなる?
遺産の名義変更までの流れ
【1】相続人の確定
まずは被相続人(亡くなった方)の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍を取得します。
戸籍を収集したらその戸籍から相続人を確定させます。
【2】財産の調査
次は財産の調査を行います。不動産、有価証券、ゴルフ会員権、現預金、車、貸金庫等々。
相続人が数人いる場合は財産目録を作成することをお勧めします。
【3】遺産分割協議及び遺産分割協議書の作成
【2】で調査した財産について【1】で確定した相続人の間でどの財産を取得するのかを協議(遺産分割協議)します。
遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議書を作成し相続人全員が署名、実印で捺印をします。
【4】その後の手続き
遺産分割協議書、戸籍、印鑑証明書などを証明書類として、遺産の名義変更を行います。
自分で手続きを進めた場合のリスク
【1】相続人の確定を自分で確定させた場合のリスク
被相続人の古い除籍謄本や改正原戸籍などの手書きの戸籍を読み解いていかなければならず、養子縁組や認知された子などを見落とす可能性があります。また本籍地の変更や結婚、離婚の履歴がある場合も戸籍の収集が煩雑になり、見落としの可能性が高くなります。
では、相続人を見落としたまま遺産分割協議が成立してしまった場合はどうなるのでしょうか。
1.遺産分割協議のやり直し
新たな相続人が発覚した場合、以前に行われた遺産分割協議は無効となり、新たに発覚した相続人を含めた全ての相続人で改めて遺産分割協議をすることになります。
2.相続回復請求
新たに発覚した相続人は、以前に遺産分割協議を行った相続人に対して、自分の相続分を請求することができます。またこの請求権は新たに発覚した相続人が遺産分割協議の事実を知ってから5年で時効により消滅(請求権を失う)し、相続分があることを知らないまま20年が経過しても時効により消滅します。
新たな相続人と遺産分割協議が成立しない場合は家庭裁判所での調停や訴訟に可能性もあります。
【2】財産の調査を自分で行った場合のリスク
もし、調査した財産に漏れがあり遺産分割をした後に新たな財産が発覚した場合はどうばるのでしょう。
民法第907条(遺産の分割の協議又は審判)
第1項 共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
としているので、新たに発覚した財産につきまた新たに相続人同士で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成して名義変更の手続きをすることになります。また、相続税の申告が終わっていた場合などは修正申告をしなければならない可能性もあります。
【3】遺産分割協議及び遺産分割協議書を自分で作成した場合のリスク
遺産分割協議書を自分で作成した場合に考えられるリスクとして、協議書に書く文章が曖昧な表現であったり、どっちとも取れるような文章にしてしまい、後から相続人同士で文章の解釈について揉め事になる可能性があります。
また、銀行預金の分割の際も曖昧な表現で文章を組み立ててしまうと、銀行の相続届に相続人全員の証明押印が必要になったりします。せっかく遺産分割協議書に全員の署名押印をして銀行に分割の手続きに行っても、更に銀行所定の書類に全員の押印をしなければならなくなってしえば2度手間になってしまいます。
まとめ
冒頭で結論付けてますが相続手続きは専門家に依頼しなくても自分でできます。
しかし自分で手続きが出来たとしても、相続人の調査や財産の調査で見落としが発生してしまうとまた新たに遺産分割協議をして遺産分割協議書を作成しなければなりません。
◦相続人漏れによる遺産分割協議のやり直し
◦財産調査の漏れにより、その遺産につき新たに遺産分割協議の開始
◦相続税申告が終わっていたら修正申告の必要性も
◦協議書の書き方次第では相続人同士の揉め事や、他の手続きの遅れも
◦相続が開始して10ヶ月以内に相続税申告をしないと控除や税額軽減を受けられない
といったようなリスクが必ずついてきます。こういったことが生じると、かなりの時間と労力を無駄にしてしまい、最初からお金を出してプロに頼んでおけばよかったという事になりかねません。
また、無料で教えてくれるところとして市町村でやっている無料相談などがありますが、一人当たりの相談時間が決まっているケースが多く、全てを教えてくれるわけでありません。
そもそも、全てを教えるとなると細かく相談内容のヒアリングをしてからある程度の結論を出していくので、かなりの時間がかかります。そして手続きを進めていく途中で新たに問題が発生してくることも多く、無料相談などのヒアリングで全ての答えを出すことは到底難しく、抽象的な回答しか得られなというのが現実です。
私の持論ではありますが相続の手続きを自分でやる場合、普通の順番で考えると自分の母親か父親のどちらか片方と、配偶者の2回程度だと思います。その回数でパーフェクトの結果を出すというのは難しいのではないのかと思います。逆に専門家の場合、かなりの件数の相続手続きを経験しているので、調査漏れや手続ミスがありません。更に法律系の国家試験パスしているので民法に精通している専門家がほとんどです。
専門家に依頼するメリットはミスなくスムーズに手続きが完了し、デメリットはお金がかかるという点です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
相続手続きでお困りの方はは当事務所にご相談ください。
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