相続

農地や森林を相続によって所有権を取得した場合に、相続人は農地や森林を相続により取得した旨を市町村の農業委員会や農林水産課(市町村長)などに届け出を行わなければなりません。
どういった内容の届出をするのか見ていきましょう。


【相続関係のリンク先】
親が亡くなったらすること。手続き 葬儀 相続 相続放棄
遺産分割協議書とは
相続時の不動産調査(市と法務局の相違)
相続手続き 自分でできる?
遺産分割をやらないとどうなる?

【遺言のリンク先】
遺言書の種類
遺言書 書くべき人

農地

まずは農地の届出から見ていきましょう。
《農地法3条の3の規定による届出》
相続や時効取得等により農地の権利を取得した者は、権利取得をしたことを知った時からおおむね10ヶ月以内に農業委員会に届出をしなければなりません。
農地は基本的には、農業を営む者か相続人しか所有権を取得することができません。なので、相続人が農業をやらなくても、相続人というだけで農地を取得することができ、そういったケースでも農地法3条の届出は必要となります。

それでは届出の記載内容を確認していきましょう。
1・届出者の住所、氏名、電話番号
2・所有権を取得した原因
3・権利を取得した者の氏名、住所、国籍等
4・届出に係る土地の所在地
  所在・地番、登記簿上の地目・現況の地目、面積、持分
5・権利を取得した日
6・権利を取得した事由
  相続の場合、被相続人の氏名
7・取得した権利の種類及び内容
8・第三者への所有権の移転又は賃借権の設定等によるあっせん等の希望の有無
☆添付書類として登記完了証書の写し又は全部事項証明書の写し等相続したことがわかる書類

相続は両親が生きていたとして、最低でも人生で2度は経験するという方がほとんどでしょう。しかしその人生でたった2回の相続で農地法3条の届出が必要なのか。農地法3条の届出をどうやって書けばいいのか。などといった専門的な知識を求められてもよくわからないという方がほとんどです。

ここまでは《農地法3条の3の規定による届出》の解説をしましたが、ここからは少し余談で農家さんのために農地法3条、4条、5条をざっくり表で解説をしていきます。

法第3条法第4条法第5条
許可農地・採草放・採草放牧地のまま他人が譲り受ける場合農地を農地以外のものにする者
【例】
・農地から宅地や駐車場など
農地・採草放牧地を宅地などに転用するために土地を売ったり貸したりする場合
【例】
・自分の農地を他人が転用して借りる
・自分の農地を他人が転用して買う
届出相続、時効取得により農地の権利を取得したとき市街化区域内の農地を農地以外のものにする場合市街化区域内の農地を農地以外のものにする場合

市街化区域や調整区域などといった言葉ではどういった地域なのか分かりずらいので、リンクを貼っておきます。
国土交通省用途地域
市街化区域=積極的に市街化にしていく場所
調整区域=市街化を抑制し、主に自然や田畑などがメインで建物を建てられない場所
こんなイメージです。


森林

平成23年の森林法の改正により、平成24年4月以降、森林の土地の所有者となった者は市町村長への届出が必要になりました。


◇届出対象者
個人、法人を問わず、売買や相続等により森林の土地を新たに取得した方が対象となります。上記のように平成24年4月以降に森林の所有者となった者が対象となるため、平成24年4月より以前に売買で取得している方や、相続が発生してる方に関しては対象外となります。特に相続の場合は登記した日ではなく相続が発生した日(森林の所有者が亡くなった日)となるので、森林の所有者が平成24年4月以前に亡くなっているのか、平成24年4月以降に亡くなっているのかで、届出の要否が分かれます。更に平成24年4月以前に森林の所有者が亡くなっていて相続登記をしないまま、その後その森林所有者の相続人が平成24年以降に亡くなり数次相続が発生した場合などは森林を相続する相続人となる人によって届出の要否が変わってくるので注意が必要です。

◇届出の対象となる土地
都道府県が策定する地域森林計画の対象となっている森林。
登記簿上の地目によらず、現状が森林となっている場合は届出の対象になる可能性があります。

◇届出期間
土地の所有者となった日から90日以内に、取得した土地のある市町村長の届出をする。

◇届出書記載事項と添付書類
〈届出書〉
 1・届出者と前所有者の住所氏名
 2・所有者となった年月日
 3・所有権移転の原因
 4・土地の所在地及び面積
 5・所有者となった者の土地の利用用途や、境界の把握状況の記載
〈添付書類〉
 1・登記事項証明書又は権利を取得したことの分かる書類
 2・土地の位置を示す図面

ここで一つ!届出期間に関して物申します!
農地の場合は「権利取得をしたことを知った時からおおむね10ヶ月以内」
森林の場合は「土地の所有者となった日から90日以内」と非常に短期間です。
農地の届出期間は相続税申告をする期間とほぼ同じ期間に設定されています。何が言いたいのかというと・・・


以前、私がやらせていただいた相続手続きを時系列で説明します。
令和○年11月15日に森林の所有者さんがお亡くなりになりました。

同年12月1日に相続手続きのご依頼をいただきました。

同年12月24日に相続人の確定

翌年1月8日財産確定、財産目録の納品

1月9日から遺産分割協議の開始

2月23日に遺産分割協議書に署名捺印

2月25日に司法書士さんに登記の依頼

3月中頃に登記申請完了のご連絡をいただく

4月7日に森林の届出

届出書の所有者となった年月日とは、被相続人が亡くなった日を記入するので令和○年11月15日となり、添付書類に登記事項証明書とあるので、登記簿を手に入れられるのが翌年の令和○年3月中旬以降となります。かなりハイペースで業務を進めていったつもりだったのですが、土地の所有者となった日から届出まで143日かかっていました。
相続人の調査や財産調査が難航してしまうと、更に期間を要してしまいます。
また、相続放棄するか相続するかの熟慮期間は相続の開始を知った時から3ヶ月に設定されており、ギリギリで相続することを決めた場合「土地の所有者となった日から90日以内」に届出を行うという設定にはかなり無理があるように思えます。


届出が遅れたからと言って特にペナルティーがあるわけではないのですが、今のご時世、森林を売買で取得するよりも相続で取得する方が圧倒的に多くなっています。なぜ90日以内という短期間の設定となったかはわかりませんが、届出期間の設定は農地と同じ「権利取得をしたことを知った時からおおむね10ヶ月以内」にするべきでは?と思いました。

相続財産に森林や農地があり、手続きや届出などどうしていいか分からない方や、お困りの方は専門家にご相談しましょう。

 

⇩  ⇩  ⇩

行政書士池田浩二事務所のホームページ